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システム実証試験報告書  要約
今回の実証試験の成果を提案の根幹となるマイクロバブルの性質を最近分かってきたものも含め明らかにしながら報告します。
1 マイクロバブルとは
液体中における直径が、2~50ミクロン:マイクロメートルの微細気泡をいいます。
(1マイクロメートルは、1/1000mm=1/1000000mです。因みに、花粉は、20ミクロン程度、ハウスダストは、1ミクロン以下。)
目視できる一般的に言う泡は、直径1mm程度でミリバブルと呼び、水などの液体中を大きくなりながら浮上していく。マイクロバブルは、この一般的ミリバブルとはまったく異なる性質を持ちます。
※このバブルの中の気体は、簡単なシステムでCO2などのガスに変えることができる。
既に使用されている回収CO2ボンベで可能。
(1)マイクロバブルの特性
○微細気泡のため、浮上するに従い水中で縮小しついには破裂し、消滅します。つまり溶解してしまいます。 (自己加圧効果)
※バブルの中の気体は、理論的には空気中に放出されない。つまり水槽に閉じ込めることができる。
このことはCO2の削減に有効である
※実際CO2を最も吸収しているのは海ですが、吸収量が増えすぎると海水が酸性化して生物への影響が懸念されています。
陸上据え置き水槽による養殖が望ましい。

○マイクロバブルは水面に到達する前に圧壊し、発熱するとともに
○消滅時に強酸化性のフリーラジカルを発生し、滅菌、殺菌効果や不活化効果などを発揮します。
○マイクロバブルは、微細なところにも浸入浸透します。
○また帯電しているため水中の有機物、有害物質、ゴミなどに付着し浮上させます。
○さらに水面付近でマイナスイオンを発生させます。
※このような特性から養殖カキなどのノロウィルス対策として既に実用化されました。
その洗浄力からお風呂回りへの商品開発も進んできました。(この項目について後述)

システムが完成すれば水質の悪化を抑制してアワビ等の高級食材も養殖可能

(2)開発経緯
マイクロバブルの呼び名は、徳山高専大成教授によって1995年頃に名づけられました。
教授の研究は、水処理用エアーレーション装置の開発でした。
産業技術総合研究所などによってナノバブルの研究と共に技術解明や工学的応用が進められると共に、マイクロバブル発生装置の製造と応用が、30社ほどのメーカーでなされています。
マイクロガスタンク(MGT)戦術研究所の代表は、旧勤務先である大手工業ガスメーカー、炭酸ガスメーカーの支援を得てO2,CO2などによるマイクロバブルの研究開発を経て今回の提案装置への応用技術の共同開発に至る。
産業所有権:「二酸化炭素によるマイクロバブルの応用:特開2006-320675」
(3)海藻類への応用例
二酸化炭素が水中植物に溶存二酸化炭素(DCO2)として作用し、光合成を行うことを利用して、淡水魚、熱帯魚水槽において、水草にCO2を供給して水草を生育させると共に発生する酸素(DO)で魚を飼育する方法が(株)日本炭酸瓦斯などのメーカーにより最近、世界的に普及した。すなわちCO2のバブリング(エアーレーション)で水草が成長促進されることは既に業界では認知されている。例えば小さな水槽で藻類を早く生育させる場合に予め二酸化炭素の供給源として重曹を溶かしこむ手法が用いられるようになって来ました。
しかしながら空気バブリング方式は、空気中のほとんどが窒素と酸素でありミリバブル性質上、水中に溶け込む効率でロスが大きかった。
(日本炭酸瓦斯株式会社は、炭酸ガスミニボトルの世界的メーカーです。)
※本装置においても海藻の光合成に効果を確認できた。  写真参照
また、CO2マイクロバブル供給海水は、海藻の活性に効果があり自然状態より1月以上長持ちした。
※この方式で、沖縄においては、海ぶどうの養殖が始まりました。(巨大装置である)
※コストの面から供給CO2は、ほとんどの装置が拡散器を取り付けたバブリング方式です。理論的にはDCO2の供給が理想的です。(ミリバブルよりマイクロバブル)
水産養殖技術の研究において、養殖環境の水質悪化、低酸素水域、深層低酸素帯、赤潮、青潮、嫌気性プランクトン、有害菌類汚染等の問題に、最も有効なのは溶存酸素(DO)であることは分かっていたもののその方法としては、空気のバブリングであり、後に純酸素のバブリングも行われ効果は絶大ながら高コストが問題になっていました。マイクロバブル発生装置の開発により空気を用いて同様の効果が得られることが判明しているがそれでもコストの問題で実用化に至っていません。
※従って、グラム単価の安い海藻類の養殖にマイクロバブルの応用は、検討されてこなかったのが実情です。

海藻から高級食材への食物連鎖でコストを吸収  
本方式が実現すれば世界初  ブランド化も可能
(4)回収二酸化炭素(CO2)とは
世界の総排出量は、272億t、年率11%で増加しているといわれています。回収CO2とはその中の化石燃料、化学肥料、プラスチックなどを製造する際に出る排気ガスから、回収し精製したものを言い、消火器、ビールなどの炭酸飲料、中和ガス、溶接用、鋳物用、ドライアイスなどの冷却用、人工炭酸泉などに使用されています。その全量はおよそ85万トンで、使用された後80万トンがまた大気中に放出されています。
つまりCO2の減少は、海水中に溶け込むか植物の光合成で固定されるのがほとんどです。しかしながら地球は砂漠化、サンゴ礁の死滅、磯焼けがすすみ保全が叫ばれているのが現状です。

※既に他の目的のために製造された回収CO2の利用はこの時点でカウント済みの排出量であり、本装置による養殖は光合成のCO2固定で再放出されるCO2の削減になる。
また、海藻類はバイオエタノールの原料として有望であり三菱グループがその実用化に向けて動き始めました。
本装置による事業が稼動すれば、余剰海藻を海へ開放し海の再生とCO2吸収にさらに寄与できる。また、海藻の洋上養殖を社会資本として取り組むならバイオ燃料の自給が可能になること意味する。
2 今回の実証試験の成果
システムの提案から研究の間にも様々なことが明かになりいろんな分野で装置が開発されてきました。現時点では、もはや理論の正当性ではなく、ローコストなシステム開発と事業化が競われています。
マイクロバブルの有効性の証明は、水槽容量、海藻類の量、太陽光量、水温、CO2ガス量のバランスをとるところに難しさがあった。また試験地の水質の問題が前提として存在した。
これを平易に調整できる装置はさらに改良中であるが地下海水と沖合い海水を天気や潮の干満を考慮した取水をpH、栄養塩濃度、水温などを管理しながら行うシステムにした。またO2,CO2マイクロバブル供給を昼夜で簡単に切り替えられるようにし低濃度安定供給できるようにした。海藻養殖槽、ウニ養殖槽を別にすることで効率が上がることも分かり、事業化ではそれぞれに適した水槽を並べたい。
装置の安定化により次のことが判明した。
➊海藻(ホンダワラ)へのマイクロバブルCO2供給は、光合成を活性化させる。可視化するためホンダワラが全面から太陽光を受けられるようにした特殊な水槽を作り実験を行った。成長速度の比較は、ホンダワラ種苗採取の問題でできなかったため光合成速度の比較で行うこととした。光合成は、二酸化炭素から炭水化物を合成しその過程で酸素を放出することから植物の成長を推定できる。マイクロバブルCO2の供給により朝日が昇りしばらくすると光合成によりホンダワラ表面より気泡が次々に発生し上昇、ホンダワラも浮上する。実験では自然状態のものは、気泡の発生も遅く1時間以上遅れてゆっくりと浮上した。
➋海藻養殖において、水温上昇、雨水流入ショックよりも太陽光の強さによる影響が大きいことが分かった。このことは梅雨の河口付近で海藻が育っていることからも理解できる。
➌海藻へのCO2供給は、高濃度にするより低濃度安定供給が効果的であった。
➍CO2供給と共に海藻全体に太陽光が当たる様にする事がより効果的である。海藻は、体全体で光合成を行う。強い反射光でも光合成を行うことから添付写真のような水槽を作り実験した。
➎シラヒゲウニは、大きさすなわち成長段階において、好みの餌があるようであるがホンダワラに関しては、いずれも大好物のようで給餌と共に集まってきた。
➏シラヒゲウニが雑食性で大食漢であることも確認できた。殻径の10cm前後のものは、約10gの餌を半日で食べている。給餌方法によっては、まだ食べると思われ自分に近い大きさを消化していることになる。
➐シラヒゲウニは、水槽内で生まれた、第2世代が成長して殻径3cm程に成長している。このシステムで連続養殖が可能である。
➑ホンダワラなど海藻類の第2世代は、まだ確認できていない。ウニや貝類の餌になった可能性もあり、方策を検討する必要有り。
➒当初、コスト面から同じ水槽での同時養殖を試みたが難しく、別水槽での養殖が結果コストが低いと考えている。
➓浅型400L水槽でのシラヒゲウニの適当な養殖個数が分かってきた。
また、理想的な養殖水槽のモデルも見えてきた。
実証試験のゴールであるシラヒゲウニの実入りと食味については、食餌量と成長の様子から問題ないと考えているが11月の産卵期に確認したい。
※以上のようなことから養殖事業は充分可能と判断した。
※CO2の吸収率は、装置の完成レベルへの到達に時間を要したこととホンダワラの時期との関係から次のシーズンの計測を待たなければならない。計算値ではなく実測地を販売時のメッセージとしたい。
※今回の結果を持ってテーマの(2)以降の検討と最適規模を計算し、事業化を図りたい。

実証試験の附帯成果
●今回の実証試験の成果は、さらにCO2マイクロバブルの利用方法で、人工炭酸泉が容易に作れることを確認できた。
●炭酸泉は、動脈硬化などに抜群の効果があること、世界でも炭酸を1000ppm含む炭酸泉は、一級の温泉で数も少なく人気の温泉地である。
●ラドン温泉などと同じように人口でも法的に炭酸泉と謳っても良い事から観光的には冬場の温泉ツアーが可能になる。
●また海水との利用は、タラソテラピーに新たな魅力を付加する。
●マイクロバブルの洗浄力は、体の不自由な方の入浴方法として介護者の負担軽減で注目されています。
観光客の来島が落ち込む冬場対策として温泉ツアーが可能。

奄美の観光に大きく貢献すると考える。

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海水交換をわざと止めて数日すると海草がすぐ腐敗する。すると黒い砂になってしまうが、ここにマイクロバブルで酸素供給すると1日わずかな運転でも翌日には、目に見えて黒い砂がきれいになって行く。海の再生に道筋が見えてきた。

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シラヒゲウニも水槽に入れていろんな餌を与えてみた。水温もある程度の温かさになり、環境になれると餌をよく食べるようになる。ストレスを感じない環境は、養殖のひとつのポイントのようである。

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浮いた様子がよく分かります。この容器は、アクリル製の特別な容器で、下からの太陽光の反射を取り込めるようにしたこととこの光合成による変化を観測するために造ったものである

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マイクロバブルの炭酸ガスをきょ給してしばらくするとモズクの回りに小さな泡が出てきます。光合成です。ガス供給しなくても出てきますが少ないです。それは、泡に包まれて浮いてくる速さで分かります。光合成の測定方法が問題とされましたが明かにこれで実証されたといえる。

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これは、マイクロバブルポンプから吐き出された水流です。わずかに白く濁って見えます。泡が白く見えています。

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これは、水槽への日光の影響を調べるために移動式の水槽を作りました。今年は、記録的な梅雨でしたので、朝から日の当たるところへ移動を繰り返しました。モズク実験では明かに固定されたものより早く光合成による気泡が出ました。

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最初は、こんな感じきれいな水槽の中に海藻などが置かれた感じです。それがしばらくすると海藻が成長するばかりでなくいろんなものが生まれてきます。アメフラシやイソギンチャクなどです。海藻はいろいろ出てきます。

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これが炭酸ガス(CO2)ボンベとマイクロバブルポンプです。水槽から海水を吸い上げ、その水流の中にこのポンプの中で炭酸ガスをマイクロレベルまで粉砕し一緒に元の水槽に戻します。

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実験室の完成形です。実験用の水槽の追加と配水系に改良をいろいろしました。これが後にウニの第2世代の誕生に繋がりました。

ホンダワラを投入しCO2養殖の始まり。まもなく種を落とします。ホンダワラの難しさは、意外に種類が多く、特に最近南方系の流れ藻も増えてきたとのこと。成長過程にずれが生じたときの判断が難しい。

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やっと濁りの原因が、昨日までの雨による赤土の井戸への流入と気付きました。沈殿槽を作れば、解決するのですがそれでは事業化したときの汎用性にかけるので濾し器をつけます。写真は、濾した赤土である。
一回目のポンプアップでこのように赤土が沈殿し掬い取れるほどである。試行錯誤の末、雨の後のポンプアップのために放水用バイパスをつけることにする。また、工事が増えます。トホホ
後にマイクロバブルの使い方で、頻繁に海水を変える必要がないことが分かり、あの後しばらくして吸い上げ、放水して濁りが取れてから利用すればよいことがわかった。

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やっと建物が完成です。屋根は、光合成のため太陽光が入るようにした。さらに夏には、水温が上がり過ぎないように、風通しをよくできるように設計した。問題は、中身です。ここからが面白く自然現象との対話で悪戦苦闘が待っています。試験機など何かと海水を洗い落とさなければならないので、20mほど水道を引きました。
排水は、枡に受けてチェックできるようにした。

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マイクロバブルポンプまで設置完了。暖房の熱源は、工場の廃温水をドラム缶に入れます。

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これは、養殖試験水槽です。大幅に予算を削減されたため大いに工夫と設計変更がありました。ここに、バルブや配水管の取り付け、断熱材や暖房装置を取り付けます。しかも暖房の熱源は、廃熱利用で無ければ意味が無い。

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井戸からの1次ろ過器。砂などを濾す。赤土の微粒子には役に立ちません。早速改良すべき点が見つかりました。これは、海水用になっていないため錆び対策も考えなくてはなりません。ポンプは、海水用で高い商品です。11月は、記録的雨量だったそうです。仕事がなかなか進みませんでした。

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なかなかきれいな海水が出ません。13mの深さまで掘っています。
砂の層を見るとこの辺がよさそうとのことである。しばらく海水をはかしてみる。
後で考えると、後背地からの地下水の影響の少ない、海側にもっと寄せてあるいは、海中にさらに深く打ち込み、天気・天候の影響を少なくしたほうが良かった。

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CO2削減実証試験のボーリングが始まる。まず井戸からきれいな安定した海水を汲み上げられるようにします。